はじめに
皆さんこんにちは。
早速ですがお金を貯めていますか?そして投資をしていますか?
そして最近ムーブメントとなっているFIREという考えも後押しし
株式・不動産等いろいろな投資を行う方も増えています。
さて私は一つの警鐘を鳴らしたいと思います。
FIREという考え方に?
いえ、違います。
「認知症」になった際の対処方法がほとんど語られていないことにです。
念のためFIREを知らない方の為にご説明すると
「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとって作られた言葉、そして考え方です。
日本語に訳せば要は「経済的自立と早期リタイヤ」です
お金を貯めて資産の多くを投資に回し、投資で得た利益で経済的に自立し
会社に束縛されない人生を歩むことです。
自分らしく生きるために経済的に会社に依存しない。非常に良い生き方の一つだと思っています。
FIRE関連の本や記事を読めば、お金の増やし方・投資の方法・リスク分散の方法
FIRE後の生活、様々な視点で書かれており、すべてが網羅されているかのようです。
しかし、「認知症」がすっぽり抜け落ちています。
Google検索で「認知症 FIRE」と検索しても全く記事が出てきません。
そもそもFIREを発信している人達の大半が高齢者ではないので、
致し方ないと思っています。
そのため、今日の記事では高齢者の制度についても学んできた私が
皆さまが実際に「認知症」になっても困らないように対処方法について
お伝えしようと思います。

65歳以上の5人に1人が「認知症」
厚生労働省の予想では2025年には65歳以上の5人に1人が「認知症」になると言われています。
そもそも皆さんは「認知症」をご存じですか。
一言で認知症と言っても、軽度から重度まで幅はあります。
主な症状としては
脳の認知機能が低下し、日常生活が困難になる病気のことです。
もっとわかりやすく言えば記憶が困難となり
自分が何をしようとしていたのか、誰と話しているのか
どこにいるのか、今はいつなのか
自分は何歳なのか等がわからなくなります。
重度まで進行すると会話や発語すら難しくなります。
今のところ、認知症の進行を遅らせたり
周辺症状(幻覚、徘徊、暴言等)を和らげたりする薬はありますが
完治する薬はまだ発明されていません。
誤解が無いよう補足しますと私は高齢者と関わる仕事もしていたのでわかりますが
「認知症」になったら終わりということではありません。
認知症になってからも、介護サービスや医療部門と連携しながら
地域の中で本人らしい生活されている方はたくさんいます。
今回の記事では認知症になった方の介護としての向き合い方ではなく
認知症から資産を守る方法という視点で記載しておりますので
その点をご理解したうで記事を読み進めて頂ければ幸いです。
「認知症」になっても資産を守る方法。それは「成年後見制度」と「家族信託」
皆さん認知症になっても資産運用ができると思いますか?
株式相場を見ながら売り買いを判断したり、リバランスをしたり、4%ルールで切り崩したり。
今の皆さんであればもちろん可能でしょう。
しかし、どうでしょうか。
記憶の保持ができなくなった老後にこのような技術と判断が必要な行為はできると思いますか?
実際問題かなり難しいでしょう。
その時にどのような方法があるのでしょうか。
家族に依頼する?
頼りになる身内がいない場合は信頼できる友人に依頼する?
このように「簡単に頼めるもの」と思っている方もいるかもしれません。
しかし現実は違います。
銀行、投資会社等は「本人」以外からの手続きについては親族と言えど取り合ってくれません。
法的には親族ですら第三者、要は赤の他人と同じ扱いなのです。
それではどうすればよいのか。
認知症の方が資産を守る手段としては二つあります。
- 「成年後見制度」
- 「家族信託」
どちらが良いのか、またどちらも使った方が良いのかはケースバイケースです。
今回の記事は上記2つの制度について基礎知識を学んでもらい
老後の資産の守り方について知ってもらうことを目標としています。

成年後見制度はどのように資産を守ってくれる?
成年後見制度とは「成年後見人に財産管理や身上監護を行ってもらう制度」になります。
財産管理とはその言葉の意味のまま、財産を管理します。
身上監護とは身の回りの生活を整える手続きを後見人が行うものです。
後見人自身で身の回りの世話をするわけではありません。
例)家事や調理のために介護ヘルパーを自宅に導入する「手続き」をする等
成年後見制度と言っても大きく分けて2つあります。
「任意後見」と「法定後見」です。
任意後見とは認知症になる前に成年後見人になってもらう人を決めておくという方法です。
本人の「任意」で後見人を選任する方法です。
認知症を発症すれば、任意後見人に活動を開始してもらうというものです。
いっぽう法定後見とは認知症になった後に裁判所に後見人を選任してもらう方法となります。
後見人になってもらいたいと思う人を候補人として希望することはできますが
候補人が選任されるかは裁判所の判断となります。
何故なら既に「認知症」となっているので、本人の判断のみで希望の後見人を選任してしまえば
悪用し財産を不当につかう人が後見人となってしまう可能性があるからです。
良くも悪くも裁判所は「本人の資産が守ることができる人」という視点でしか選任しません。
そのため法定後見の場合、資産が多いと候補人に親族をあげても選任されづらいと言われています。
そのような場合は専門職である弁護士・司法書士が選ばれる場合がほとんどです。
専門職が後見人となる場合については毎年報酬を払う必要があります。
その報酬金額は裁判所が決めることとなりますが
この費用を老後の出費予測に含めている人が何人いるのでしょうか。
そして最大の注意点として成年後見人は「財産管理」はできますが「資産運用」はできません。
リバランス、新規投資等の複雑なことは一切できないと思ってください。
本人の生活のために4%ずつ毎年引きだすということであればできるかもしれません。
後見人は年に1回、裁判所のチェックを受けることとなっていまが4%ルールは
資産を取り崩し引き出しているだけですので裁判所から認められる可能性は高いです。
あくまで「4%ルール」を知っている人が後見人なった場合ですが・・・
また、後見人は原則「本人の為にのみ」しかお金を引き出せません。
家族の意思で引き出すことはできないということを理解したうえで
成年後見制度を利用しなければ、思わぬトラブルとなってしまう可能性もあります。
成年後見制度のメリット・デメリット
(メリット)
本人の財産を確実に守り生活費に充ててくれる
(デメリット)
後見人に報酬(月2万円~5万円)を支払い続けなければならない。
後見制度を途中でやめることはできない。
原則、家族の為にお金を使うことはできない。
後見人による資産運用は不可。相続税対策も不可。そのため資産が増えることはない。
家族信託はどのように資産を守ってくれる?
成年後見制度という言葉は何となく聞いたこともある方も多いと思いますが
家族信託は初耳の人も多いのではないでしょうか。
最近、成年後見制度ではなく家族信託を利用される方や
成年後見制度と家族信託を両方使う方が増えてきています。
では家族信託とはどのような制度でしょうか。
わかりやすく言えば
自分(委託者)の財産を、信頼できる人(受託者)に任せて
資産運用等の利益を得る人(受益者)のために資産を管理・処分してもらう制度です。
基本的には委託者と受益者は同一であることが多いです。
成年後見制度との大きな違いは
不動産や動産、株式、債券等を受託者に資産運用してもらうことが可能な点です。
そのため、専門的な資産運用を求められる場合には家族信託を契約すれば
老後も資産を増やすことも可能です。
また「家族」信託という言葉ですが、信頼できる「知人・友人」も委託者にすることもできます。
家族信託にも注意点があります。家族信託は契約行為になるので
中度以上の認知症の方が新規で家族信託を契約しようとしても無効となる場合があります。
家族信託を利用したい場合は元気なうちから契約しておく必要があります。
また成年後見人が行うような身上監護を行うことや年金収入のような日々の財産を信託することはできません。
つまり家族信託では認知症発症に伴う生活のフォローを網羅的にカバーしきることはできないのです。
家族信託のメリット・デメリット
(メリット)
・信用できる人に資産運用を任すことができる。
・初期費用に50~100万かかるが、管理する受託者に基本的に報酬は発生しない
(デメリット)
・認知症発症後の場合、軽度でなければ家族信託の開始契約を結ぶことはできない。
・定期的な年金収入などの財産管理は不可。
・身上監護の権利は含まれていない。
・受託者が悪用しないように監督する人を付けるには毎月1万~2万の費用がかかる。

成年後見制度と家族信託。どちらを選べば良い?!
成年後見制度と家族信託は両輪の制度ともいわれています。
潤沢に資産がある場合には両方の利用が勧められています。
成年後見人に財産管理・身上監護をしてもらい家族信託で信頼できる人(受託者)に資産運用してもらう。
そして成年後見人に受託者が不正をしないかも監督してもらう。
そうすれば認知症になったとしても思いがけないような資産喪失をすることは無くなることでしょう。
もちろん、費用がかかりますので、今から老後の支出予測に含めておくことでより安心して年を重ねることができると思います。
(費用まとめ)
家族信託:初期費用として50~100万円。
不正が行われないように監督人を付ける場合は月1万円~2万円
成年後見:申し立て費用に20万円。選任されれば月2万~5万円(資産額に応じて)
※家族信託と成年後見の両方を使う場合は家族信託の監督人を付けず
成年後見人に監督人の代わりをしてもらうことは可能。
さいごに伝えたいこと
軽度認知症の場合であれば家族信託という選択肢が利用できることはご説明させてもらいました。
もし今後、少しでも違和感があれば認知症専門の病院にすぐに行ってください。
早期発見し、早期に治療を開始することで進行を遅らせることができます。
家族に迷惑をかけたくないと思って秘密にしていると
結果的に認知症がより進行してしまう可能性が高くなります。
そのため「自分の為、家族の為」にすぐに受診をしてください。

まとめ
- 65歳の5人に1人が「認知症」。発症すると皆さんの資産を安全に守ることも増やすこともできなくなるリスクがでてくる。
- 対処方法としては「成年後見制度」と「家族信託」がある。
- 資産を安全に守る方法が「成年後見制度」。
- 資産運用を信頼できる人に任すのが「家族信託」
- 双方にメリット・デメリットがあるが両方を使うことで補い合うことができる。ただし費用が掛かるので老後の出費として予測しておく。
- 「認知症」かもしれないと思ったら早期受診を!
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